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09. MINO SOIL ① 共感がくれた確信

  • Eriko Tsuchida
  • 11 時間前
  • 読了時間: 6分

私たちが「土から語る」と決めた日 〜

フィロソフィー

・美濃焼の可能性を引き出し、物語とともに届ける

・土と食を探求し、土の都・美濃に貢献する        

お疲れ様です。

今日は、私たちの会社にとって、今や大きな転機となった企画「MINO SOIL(ミノソイル)」(※1)について、改めてしっかりと伝えていきたいと思います。

この企画がどうやって生まれ、なぜ私たちがこれほど「土」について語るようになったのか。その原点についての話です。

プロダクトか、土か。

ことの始まりは、スイス人のディレクターであるダヴィ(※2)との出会いでした。


彼は、タイルメーカーであるエクシィズさんのディレクターも務めており、そのご縁で「タイル」と「器」、お互いの業界の枠を超えた新しいジャパンブランドを作れないか、という話になったのです。

最初、私は「土の展示会」をやりたいと提案しました。私たちの原点である「土」そのものをブランディングすべきだ、と。


しかし、ダヴィは首を縦に振りませんでした。 「イザワさん、それは伝わらない。お客様はまずプロダクト(商品)に触れ、そこに魅力を感じて、初めてその背景にあるストーリーや素材(土)に興味を持つんだ。いきなり土を見せられても、共感は生まれない。」

彼はそう言いました。理屈は通っています。 しかし、私は諦めきれませんでした。


そこで私は、ダヴィをある場所へ連れて行きました。

美濃の原料メーカー、カネ利陶料の岩島会長にご協力いただき、あの「鉱山」を訪れたのです。

目の前には、何万年もの時が重なった土の層が、そのまま剥き出しになっている。 その景色を前に、ただ私たちは黙って立っていました。


すると、ダヴィが 「イザワさん、分かった。君は正しかった。…私たちは、プロダクトからじゃない。土から伝えるべきだ」と口を開いたのです。

あの時、理屈抜きで、私たちの価値観が一つになったのです。 言葉で説明するよりも、あの鉱山の迫力を肌で感じたこと。その体験そのものが、彼の考えを変えたんだと思います。

この出来事が、MINO SOILの本当の始まりになりました。

100%の共感がくれた「確信」


私たちは、この「土の力」をどう表現するか、という一点に集中しました。

まず、ダヴィは、世界的に有名なインドの建築家、ビジョイ・ジェイン(※3)に声を掛けました。

彼は「土」を非常に大切にする建築家として知られており、私たちのコンセプトを聞いて「これは、私がやるべき仕事だ」と、二つ返事で引き受けてくれたのです。

当時の私は、ビジョイがどれほど凄い人物か、正直なところ、よく分かっていませんでした。


2021年6月、MINO SOIL(ミノソイル)の展示会当日は、コロナ禍の真っ只中。

残念ながらビジョイは来日できず、インドからリモートで、展示ビジュアルの指示が飛ぶ中、設営は進みました。(当時、あの大量の土を運び込んだスタッフたちの苦労は、計り知れないものがあったと思います)「本当にお客様は来てくれるのか…」正直、不安でした。

MINO SOIL 2021 @表参道
MINO SOIL 2021 @表参道

MINO SOIL 2021 @表参道
MINO SOIL 2021 @表参道

しかし、蓋を開けてみれば、会場には次から次へと人が訪れたのです。しかも、私たちの予想と違ったのは、ビジョイ・ジェインの名前を聞きつけた「建築好き」の若い人たちが、熱心に展示を見ていたことでした。

そして、実際に展示が始まり、お客様と言葉を交わす中で、私たちはある決定的な「気づき」を得ることになりました。

当時、アテンドに入った東京のスタッフたちは、開催前日まで「この展示をどう説明すればいいんだ…」と、必死でセールストークを練習していました。そして、ぶっつけ本番でお客様に、私たちが鉱山で感じた「土の物語」を語り始めたのです。

すると、何が起きたのかというと、 聞いたお客様が、100%、深く共感してくださる。 その手応えを、私たちは肌で、まさに「体感」したのです。

この経験が、私に一つの「確信」を与えてくれました。 それは、「焼き物を売る人間は、土から語れ」ということです。

土ができるまでのプロセス、東海湖のストーリー。その物語にまず共感していただいた上で商品を提案するのと、いきなり商品を売り込むのとでは、お客様の心の開き方が全く違う。


私たちの「資産」になった物語


この「100%の共感」という成功体験こそ、MINO SOILが私たちにもたらした、何物にも代え難い資産です。 あの日、あの場所に立った人と、そうでない人とでは、今も理念への理解度が違うとさえ感じています。だからこそ、あの展示は今、GROUND MINOに移設され、そこのスタッフたちが「土から語る」ためのトレーニングの場となっているのです。


今となっては、陶芸家の安藤雅信さんから「あのMINO SOILは、僕らの業界でもすごく話題になって、評価されているよ」と言っていただけるほど、記憶に残る企画となりました。


面白いのは、当初はエクシィズさんとの共同企画として始まったこのプロジェクトが、私たちがその後も「土」について語り続けることで、社外の方々に「土といえば井澤コーポレーション」というイメージを持っていただけるきっかけになったことです。

あの時の挑戦が、ボクシングの「ジャブ」のように、数年経った今になってじわじわと効いてきている。 それが、今の私たちの信用や、新しい仕事へのチャンスに繋がっている。そんな不思議な感覚があります。

これは、「物語を語り続けること」が、どれほど大きなブランディングになるか、という証明でもあります。

展示会場@表参道
展示会場@表参道

今、会社にいる全ての皆さんに、この成功体験と、私たちが持つ「物語」という資産の価値を知ってほしい。そして、自信を持って、お客様に「土から語って」ほしいのです。


解説

※1 MINO SOILとは、日本最大の陶磁器産地である岐阜県美濃地方(多治見市など)を拠点とする、持続可能なものづくりを目指す陶磁器ブランド・プロジェクトのこと。


※2  David Glaettli(ダヴィッド・グレットリ)氏。スイス出身のクリエイティブディレクター/デザイナー。


※3  Bijoy Jain(ビジョイ・ジェイン)スタジオ・ムンバイ主宰。土や自然素材を用いた建築で成果的に評価されており、日本では広島・尾道のホテル「LOG」を手掛けたことでも知られている。



井澤コーポレーション/ ART HOME DESIGN フィロソフィー

このブログで語られる私たちの挑戦は、すべてこのフィロソフィーに基づいています。


【PURPOSE】

うつわの可能性をひろげ、五感で味わう食文化をつくる


【VISION】

井澤コーポレーション

産地と食卓をつなぐ、セラミックプロデュースカンパニー


ART HOME DESIGN

産地と食卓をつなぐ、セラミックデザインカンパニー   


【MISSION】

井澤コーポレーション

  • For Customer:美濃焼の可能性を引き出し、物語とともに届ける

  • For Industry:作り手と使い手の接点を増やし、産地に貢献する

  • For Society:当たり前を塗り替え、持続可能な窯業を確立する

  • For Employment:物心の幸福を追求し、働きがいのある環境を創る


ART HOME DESIGN

  • 土と食を探求し、土の都・美濃に貢献する

  • 時代を読み解き、世界との多面的なつながりをつくる

  • 産地と世界から着想し、デザインで食文化を創造する


【VALUES】

  • to Think:美味しいを哲学する

  • to Communicate:質から逃げない

  • to Make:心と言葉を尽くす

  • to Live:暮らしを楽しむ


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