05. 私が握っていたのは、ロープじゃなくて「ゴム」だった話
- Eriko Tsuchida
- 11月17日
- 読了時間: 4分
〜 なぜ、リーダーの熱意は空回りしてしまうのか 〜
フィロソフィー: 質から逃げない/心と言葉を尽くす

お疲れ様です。
社長という立場でみんなを引っ張っていると、時々すごく孤独を感じることがあります。 誰よりも会社の未来を考えて、先頭を走っているつもりでいる。でも、ふと振り返ると、みんなが思ったよりずっと後ろにいる。
今日は、私が経営者として経験した、本当に痛い失敗談をさせてください。良かれと思って情熱が先走ってしまった、という話です。
当時、私は新しい事業を軌道に乗せることに必死でこの事業の価値を、この想いを、一刻も早く表現したい。その一心でした。「私たちの手で、『土』の新しい価値を表現していこう」 そう信じて作家さんにも声を掛けましたが、集まってくれたのは3人だけ。まだ私たちの言葉には重みがなく、社外からの信用というものが全くなかったんです。
その焦りは、社内での行動にも表れていました。 会社のホームページを見るたびに、「これじゃ、私たちが一番大事にしている『土』の価値が、何一つ伝わらない」と、感じていました。
そして私は、一番やってはいけないことをします。担当の社員に一言も相談せず、自分の判断で井澤の子会社のホームページのデザインをガラリと変えてしまったのです。
当然、そのページを大切に育ててきた彼女は怒りました。静かでしたけど、強い口調で「なぜ、相談してくれなかったのですか」と。彼女の言葉は、100%正しかったです。
でも、当時の私は頭で分かっていても、「会社を良くするためだ」という思い込みが、周りを見えなくさせていたのです。「なんでこの想いが分からないんだ」という勝手な苛立ちと、「ああ、伝え方も順番も、全部間違えた」という後悔で、頭がぐちゃぐちゃでした。
課題は、コミュニケーション不足。そして、共感してくれる仲間がいないまま、自分の想いだけで突っ走ってしまったことでした。
その時の私は、みんなを引っ張るための、固くて強い「ロープ」を握っているつもりでした。 でも、違ったんです。 実際に握っていたのは、引っ張ればただ伸びていくだけの「ゴム」でした。
私が前に進めば進むほど、ゴムが伸びて、みんなとの距離が開いていくだけ。手応えが全くない。その伸びた分が、そのまま「心の距離」なんだと突きつけられたようで、本当に無力感しかありませんでした。
なぜ、固い絆のはずのロープが、ゴムに変わってしまったのか。 今思えば、理由はシンプルです。
私は、どこへ行くかという「地図」は見せても、なぜそこへ向かうのかという「想い」や「物語」を、みんなと共有できていなかった。結局、人は地図だけじゃ心から動けないんです。「なぜそこへ行くのか」を共有して初めて、みんなの足が同じ方向を向くんだと、今は分かります。
みんなのチームを繋ぐロープは、どうだろうか?ちゃんと仲間の体温が伝わってくるでしょうか?
次回は、この伸びてしまったゴムを、どうすればもう一度、強い絆のロープに変えていけるのか。私なりの考えを話したいと思います。
このブログでの「仲間」の定義
※ 仲間=友達ではない。リスペクトを持って、互いに共通の目的を持って動くのが仲間。
井澤コーポレーション/ ART HOME DESIGN フィロソフィー
このブログで語られる私たちの挑戦は、すべてこのフィロソフィーに基づいています。
【PURPOSE】
うつわの可能性をひろげ、五感で味わう食文化をつくる
【VISION】
井澤コーポレーション
産地と食卓をつなぐ、セラミックプロデュースカンパニー
ART HOME DESIGN
産地と食卓をつなぐ、セラミックデザインカンパニー
【MISSION】
井澤コーポレーション
For Customer:美濃焼の可能性を引き出し、物語とともに届ける
For Industry:作り手と使い手の接点を増やし、産地に貢献する
For Society:当たり前を塗り替え、持続可能な窯業を確立する
For Employment:物心の幸福を追求し、働きがいのある環境を創る
ART HOME DESIGN
土と食を探求し、土の都・美濃に貢献する
時代を読み解き、世界との多面的なつながりをつくる
産地と世界から着想し、デザインで食文化を創造する
【VALUES】
to Think:美味しいを哲学する
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